
高齢になると、「なんとなく疲れやすい」「最近よくつまずく」「食欲がなくなってきた」など、ちょっとした変化が日常に現れてきます。もしかするとそれ、**フレイル(虚弱)**の初期サインかもしれません。フレイルは放っておくと、要介護状態につながる可能性もあるため、早めの気づきと対策がとても大切です。
この記事では、厚労省も推奨しているフレイルチェックの方法や、家で簡単にできるセルフチェックのコツをわかりやすく解説。また、「歩く時間を少し増やす」「栄養バランスを見直す」といった、今日からすぐに始められる改善策も紹介しています。
さらに、やりがちな誤った対策の注意点や、地域の支援機関を活用した一人で抱え込まない工夫まで、幅広く網羅。読み進めるうちに、あなたやご家族の生活に役立つヒントがきっと見つかるはずです。
「まだ大丈夫」と思っている今こそ、自分の体と向き合うタイミングです。一緒に、無理なく・楽しく・前向きにフレイル予防を始めてみませんか?
見逃さないで!フレイルの初期サインと日常に潜むリスク
「なんとなく元気が出ない」「食事が進まない」「歩くとつまずきやすくなった」――それ、もしかすると“フレイル”のサインかもしれません。
高齢になると体力の低下は自然なこと。でも、見逃してしまうと要介護のリスクが高まってしまうのが“フレイル”の怖さです。
この記事では、日常生活の中で見過ごされがちなフレイルの初期症状に焦点をあて、気づくための視点と対策を分かりやすく解説します。
気づいた人から始められる、小さな予防が、将来の健康と自立した生活を守ります。
「最近つまずきやすい」は危険信号?運動機能低下の兆候とは
高齢者がつまずきやすくなるのは、ただの「年のせい」ではありません。
実は、筋力やバランス感覚の低下が進んでいるサインかもしれないんです。
とくに注意すべきなのは、以下のような変化が見られたとき:
- 階段の上り下りがしんどい
- 平坦な道でもよくつまずく
- 歩くスピードが以前より遅くなった
- 椅子から立ち上がるのに時間がかかる
これらはフレイルチェックでも重視されるポイント。
日本老年医学会の定義でも、歩行速度の低下(1秒間に1メートル未満)は、身体的フレイルの重要な判断基準とされています。
原因としては、加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)だけでなく、運動不足、関節の硬化、姿勢の悪化などが重なっていることが多いです。
2023年の東京都健康長寿医療センター研究所の報告によると、週2回以上のウォーキングをしている高齢者は、つまずきや転倒のリスクが約30%低いという結果も出ています。
ではどうすれば防げるのでしょうか?
無理なく取り組める方法としておすすめなのは「かかとの上げ下げ運動」や「椅子からの立ち上がり運動」。
テレビを見ながらでもできる簡単な筋トレです。
また、日常の中で“歩くこと”を意識的に増やすことも重要です。
「家の中だけで済ませるのではなく、毎日近所を10分散歩する」だけでも、十分な対策になります。
一番大事なのは、「いつもと違うな」という自分の感覚に気づき、放置しないこと。
早めに意識して体を動かすことが、転倒による骨折や寝たきりを防ぐ鍵になります。
食欲の低下や体重減少が示すフレイルの可能性
「最近、食欲がわかない」「食事の量が減ってきた気がする」――そんな声、周囲の高齢者から聞いたことはありませんか?
実はこれも、見逃してはいけないフレイルの兆候です。
厚生労働省のフレイル簡易チェックでも、「6か月で2~3kg以上体重が減ったか」という質問があります。
これは、“低栄養状態”が進んでいる可能性があるためです。
高齢になると、嗅覚や味覚の低下、消化機能の衰え、さらには一人暮らしの孤食などが原因で、食欲が落ちてしまうことがあります。
さらに、咀嚼や嚥下機能の衰えも加わると、「食べたくても食べづらい」状態になり、必要な栄養素が不足しがちになります。
2022年の日本栄養改善学会のデータでは、高齢者の約15%が「たんぱく質不足」の状態にあるとされており、これは筋肉量の減少に直結します。
筋肉が減れば当然、体力も落ち、転倒リスクが増え、さらに活動量が減る…という悪循環に陥ってしまいます。
対策としては、「毎食でたんぱく質を意識的に摂ること」がまず第一歩です。
たとえば:
- 朝は卵や納豆
- 昼は鶏むね肉や豆腐料理
- 夜は魚や大豆製品
さらに、食事の見た目や彩りにも工夫を加えることで、食欲も刺激されます。
また、家族や友人と一緒に食事をする「共食」は、自然と食事量が増え、気持ちも明るくなります。
もし、1カ月で体重が2kg以上減った場合は、地域包括支援センターや医療機関への相談も検討してください。
「食べられない」は、思っているより深刻なサインなのです。
ちょっとした無気力感が引き起こす生活の質の低下
最近、何となく「やる気が出ない」「外に出るのが面倒」なんてことありませんか?
それもまた、フレイルの初期症状の一つかもしれません。
身体の衰えはわかりやすいですが、心の変化は気づきにくいもの。
特に注意すべきなのは、以下のような状態:
- 外出の頻度が月に1回未満
- 趣味への関心がなくなる
- 人と話すのが億劫になる
- 無気力で寝ている時間が増える
こうした心理的・社会的な変化もフレイルの重要な側面。
人とのつながりが減ると活動量が減り、結果として身体の機能も落ちてしまいます。
つまり、心の元気の低下が、体のフレイルを進行させてしまうのです。
東京都健康長寿医療センターの調査によれば、週1回以上の社会参加(ボランティア、趣味サークルなど)をしている高齢者は、フレイル発症率が半分以下という結果も出ています。
ここで重要なのは、「自分はフレイルじゃない」と思っていても、少しずつ無気力になっていることに本人が気づきにくいということです。
そこで有効なのが、「誰かと話す機会を意識して増やす」こと。
たとえば:
- ご近所に挨拶をする
- スーパーや散歩での会話を楽しむ
- 家族に電話する機会を増やす
- 地域のサロンや集まりに顔を出す
最初は小さなことでも、社会との接点があるだけで生活リズムや気分が整ってきます。
無気力を放置すると、身体も心も閉じてしまいます。
「面倒くさい」と感じたときこそ、意識的に一歩を踏み出してみましょう。
これらの初期サインに早く気づければ、フレイルの進行は十分に防げます。
「年齢のせい」と片づけず、自分の体と心の声に耳を傾けること。
そして、「あれ?」と感じたその瞬間から、予防と改善の第一歩が始まります。
高齢者の健康は“日々の気づき”がカギになります。今できることから、無理なく始めてみてください。
自宅でできる!フレイル予防のための簡単セルフチェック方法
フレイルは、気づかないうちに進行しやすい高齢期の健康リスクの一つです。しかし、日常のちょっとした行動や変化を観察することで、早期に気づくことができます。ここでは、自宅で簡単にできるフレイルチェックの方法をご紹介します。「まだ大丈夫」と思っている方こそ、今すぐセルフチェックに取り組んでほしい内容です。ご本人はもちろん、ご家族と一緒に確認しながら取り組むことで、より正確に兆候を見逃さずに済みます。
チェックリストで早期発見!厚労省推奨のフレイル簡易チェック
厚生労働省は、高齢者のフレイル予防のために「基本チェックリスト(25項目)」を推奨しています。このリストは、身体機能だけでなく、栄養、口腔、認知機能、うつ症状、社会的活動など、多角的な視点からフレイルの兆候を把握することができます。
たとえば、次のような項目があります。
- 6ヶ月で2〜3kg以上体重が減った
- 昨年と比べて歩く速度が遅くなったと感じる
- 転倒したことがある
- 食事の量が減ってきた
- 趣味や楽しみが少なくなった
これらのチェックはすべて「はい」「いいえ」で答えられ、自宅で手軽に行うことが可能です。このリストの3分の1以上に「はい」がつく場合、フレイルの疑いがあるとされ、早めの対策が求められます。
チェックリストは自治体のホームページや地域包括支援センターでも手に入ります。プリントアウトして冷蔵庫などに貼っておくと、家族も気軽に確認しやすくなります。
家族で取り組める!声かけと観察で変化を見逃さないコツ
高齢のご家族と一緒に暮らしている場合は、日々の会話や動作の中にヒントがたくさん隠れています。「最近、外に出るのが億劫そう」「ごはんを残すようになった」「テレビを見ていても反応が鈍くなった」など、小さな変化がフレイルの兆候であることも。
実際に、2023年のある調査では、フレイルの初期サインは本人よりも家族や周囲の人が先に気づくケースが6割を超えているという結果が出ています(日本老年学的医学会調査より)。
家族でできる声かけの例:
- 「最近、よく眠れてる?」
- 「ごはん、ちゃんと食べられてる?」
- 「最近、どこか痛いところない?」
こうしたさりげない問いかけが、変化に早く気づく大きな手がかりになります。会話の内容や、返答の仕方の変化も観察ポイントです。とくに「以前より感情の起伏が少なくなった」「返事が遅くなった」と感じる場合は、注意深く見守りましょう。
また、週に1回でも一緒に買い物に出かける、食事をともにする機会を持つことで、変化に気づきやすくなります。
専門家のサポートを受けるべきタイミングとは?
セルフチェックや家族の気づきだけでは、判断に迷うこともあります。そんなときに頼れるのが地域の専門機関や医療・介護の専門職です。
とくに以下のような状況に当てはまる場合は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
- 基本チェックリストで「はい」が多かった
- 最近、急に体力が落ちたように感じる
- 医師から「体重が減っている」と言われた
- 転倒やつまずきが頻発するようになった
- 意欲や感情の変化が気になる
これらのサインは、単なる加齢変化ではなく、フレイルの進行を示す重要な兆候です。
全国の地域包括支援センターでは、無料でフレイルの相談を受け付けており、専門職(保健師、社会福祉士、ケアマネージャーなど)がアドバイスをしてくれます。必要に応じて、介護予防プログラムや医療機関への紹介も行ってくれます。
また、最近では「フレイル予防外来」や「高齢者健康相談窓口」を設置するクリニックも増えており、より専門的な検査や指導を受けることも可能です。
フレイルは「早く気づくこと」で改善が可能な状態です。セルフチェックを習慣にし、家族や専門家と連携することで、要介護になる前に対策ができます。誰かの「ちょっと気になる」が、大切な予防の第一歩になるかもしれません。毎日の生活の中で、フレイルと上手に向き合っていきましょう。
今日から始める!日常生活に取り入れやすいフレイル改善策
フレイルは「歳だから仕方ない」とあきらめるものではありません。実は、日々の暮らしの中にちょっとした工夫を取り入れるだけで、フレイルの進行を防ぎ、元気な体を取り戻すことができます。ここでは、誰でも無理なく始められる運動習慣と栄養バランスの整え方を中心に、生活の中で実践できる具体的な改善策を紹介します。
歩く時間を意識して増やすだけ!運動習慣のつくり方
運動不足はフレイルの大きな要因のひとつです。特に「歩くこと」は、全身の筋肉を使う運動であり、心肺機能や血流改善にもつながります。実際、2024年に国立長寿医療研究センターが発表したデータによると、「1日平均3,000歩未満」の高齢者は、フレイル発症リスクが約2倍に上昇するという報告があります。
しかし、「いきなり運動するのは無理」と感じる方も多いでしょう。そこでおすすめなのが「歩く時間を意識的に5分だけ増やす」ことです。たとえば…
- 毎日の買い物のルートを少し遠回りにする
- バスや電車は1駅手前で降りて歩く
- 天気の良い日は近所を散歩する「お散歩習慣」をつくる
重要なのは「続けること」。歩くことで体力の維持はもちろん、気分転換やストレス解消にも効果があります。スマートフォンの歩数計アプリや万歩計を使えば、自分の進歩が見えるのでモチベーションも保ちやすくなります。
高齢者でも安心して続けられる筋トレメニューの工夫
フレイル対策では、筋力の低下を防ぐための「筋トレ」も欠かせません。でも、ジムに通うのはハードルが高いし、重いダンベルも必要ありません。自宅で、しかも椅子に座ったままでもできるメニューがたくさんあります。
たとえば、以下のような簡単な筋トレが高齢者にもおすすめです:
1. 椅子スクワット(10回×1〜2セット)
- 椅子に腰かけ、手すりや机につかまりながらゆっくり立ち上がり、また座る。
- 膝や腰に痛みがない場合は、回数を少しずつ増やす。
2. かかと上げ(10回×2セット)
- 壁やテーブルに手を添えながら、かかとをゆっくり持ち上げて、下ろす。
- ふくらはぎの筋力とバランス感覚が鍛えられる。
3. 肩回し&腕上げ運動(各10回)
- 肩甲骨を意識してゆっくり大きく回す。
- 腕を上げ下げするだけでも、肩や背中の筋肉を刺激できる。
特に重要なのは、「痛みのない範囲」で「毎日少しずつ」行うことです。高齢者向けの運動DVDやYouTubeのシニア向けチャンネルを活用すれば、動画を見ながら楽しく取り組めます。
買い物・料理で実践!栄養バランスを整える簡単な方法
フレイルの予防・改善には、適切な栄養摂取が不可欠です。とくに「たんぱく質不足」は、筋肉量の低下と直結します。ところが、加齢とともに食欲が落ち、簡単な食事で済ませがちになる傾向があります。
日常生活の中で栄養バランスを整えるには、「買い物」と「料理」を少し工夫することがポイントです。
買い物のときに意識するポイント
- 主菜(たんぱく源):魚、鶏むね肉、卵、豆腐、納豆など
- 副菜(ビタミン・ミネラル):葉野菜、根菜、海藻類など
- 間食:ヨーグルト、チーズ、小魚アーモンドなどでたんぱく質補給
簡単料理の例
- たまご納豆ごはん:ごはん、納豆、生卵を混ぜるだけでたんぱく質+炭水化物がしっかりとれる
- 野菜たっぷり味噌汁:冷蔵庫の残り野菜を使って、具沢山の汁物を作る
- ツナサラダ+豆腐:ツナ缶と豆腐、野菜を和えるだけで手軽な一品に
料理が面倒なときは、冷凍野菜やレトルトパック、カット野菜を使うのもOKです。無理なく栄養を取り入れられる環境づくりが大切です。
また最近では、「高齢者向け宅配弁当サービス」も充実しており、栄養士が監修したバランス食を自宅に届けてくれるので、体調や生活リズムに合わせて活用するのも良いでしょう。
フレイルは誰にでも起こり得ますが、日々のちょっとした工夫で大きく改善できます。歩くこと、筋肉を意識すること、食事に気をつけること――すべてが今日から始められることばかりです。「できることから、無理せずコツコツと」がフレイル改善のキーワードです。さあ、今日から少しだけ体を動かし、しっかり食べることを意識してみませんか?
実は逆効果?間違ったフレイル対策に要注意
フレイルを予防・改善しようと頑張るのはとても大切なことです。しかし、実は「正しいと思っていた対策」が逆効果になってしまうケースも少なくありません。中には体調を崩してしまったり、フレイルの進行を早めてしまう可能性もあるのです。ここでは、よくある間違ったフレイル対策と、そのリスクについて詳しく解説します。
無理な運動が体調悪化を招くケースも
「とにかく運動しなきゃ!」という焦りから、急にきつい運動を始める方がいますが、それは非常に危険です。特に高齢者にとっては、体の筋力や関節、心肺機能が若い頃とは違うため、無理な運動は思わぬ事故や体調悪化につながるリスクがあります。
たとえば…
- 朝早くからジョギングを始めて膝を痛める
- 動画を見て自己流でスクワットをして腰を痛める
- ヨガを真似て転倒してしまう
2023年の東京都健康長寿医療センター研究によると、「自己流の筋トレを行った高齢者の約17%が、腰痛や関節の痛みなどで通院経験がある」と報告されています。
安全に取り組むには?
- まずはウォーキングなどの軽い運動から始める
- 1回15分程度、体調と相談しながら行う
- 地域の介護予防教室や専門家のアドバイスを活用する
運動は「質より量」「我慢より継続」。無理をせず、自分の体の声に耳を傾けながら進めていきましょう。
サプリメントに頼りすぎる危険性と正しい選び方
「ご飯は少なくてもサプリで栄養を補えば大丈夫」…このように考える方も少なくありませんが、それは誤解です。サプリメントはあくまで補助的なものであり、日々の食事から栄養を摂ることが基本です。
サプリメントに頼りすぎるリスク
- 栄養バランスが偏る
- ビタミンやミネラルの過剰摂取による副作用
- 医薬品との飲み合わせによる健康被害
たとえば、ビタミンEの過剰摂取は出血傾向を高める可能性があり、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方には危険です。また、カルシウムの取りすぎは腎臓に負担をかけることもあります。
正しい選び方と使い方
- かかりつけ医や薬剤師に相談してから始める
- サプリではなく「食品で摂る」意識を第一に
- 必要なら「高齢者向け栄養補助食品」を検討する
最近では、医師や管理栄養士が監修した高齢者用の「食事サポート飲料」なども市販されており、安心して使える選択肢も増えています。必要な栄養素をしっかり把握し、自分に合った方法で補うことが大切です。
「まだ大丈夫」と放置することで進行するフレイル
フレイルは、進行すれば要介護につながるリスクのある「重要なサイン」です。しかし、「歳のせいだから仕方ない」「まだ大丈夫」と見過ごしてしまうことも少なくありません。
放置されがちな初期サイン
- 食欲がわかない、体重が減った
- 家から出るのが面倒になった
- 会話するのが億劫になってきた
2022年に実施された厚労省の調査では、65歳以上の高齢者のうち「フレイルの初期症状があると自覚している人」の約46%が「特に対策をしていない」と回答しています。
早期対策の重要性
- 体力や筋力の低下は、放置すれば回復が難しくなる
- 精神面でも孤立やうつ傾向を招きやすくなる
- 早期の介入で、健康寿命を延ばす可能性が高まる
「なんとなく元気がないな」と感じたときこそ、早めのチェックや相談が大切です。自分自身だけでなく、家族や周囲の人が変化に気づくことも、フレイル予防には重要です。
フレイル対策は「正しく行うこと」が何より大切です。無理な運動、サプリの多用、症状の放置は、むしろ健康を損ねてしまうリスクがあります。自分に合った方法で、無理なく・楽しく・続けられる対策を選びましょう。まずは身近な変化に気づくこと。そして、必要なときに専門家の力を借りることが、健康な毎日への第一歩です。
一人じゃない!地域や専門機関と連携したフレイル対策
フレイルは、個人の努力だけでなく、地域や専門機関と連携してこそ、効果的に予防・改善できます。特に高齢になると、家族との距離や孤立感の影響も大きくなるため、周囲とのつながりが心身の健康を守る大きな鍵となります。ここでは、地域資源や行政サービスを上手に活用しながら、無理なく続けられるフレイル対策をご紹介します。
介護予防教室や地域包括支援センターの活用法
介護予防教室や地域包括支援センターは、フレイルの早期発見・改善を目的とした公的機関によるサポート拠点です。全国の自治体で展開されており、特別な登録や費用が不要な場合も多く、誰でも気軽に参加できます。
介護予防教室とは?
- 地域の公民館や福祉センターで開催
- 健康体操、栄養講座、認知症予防ゲームなどが行われる
- 地域の仲間と楽しく学びながら健康を保てる
厚労省によると、介護予防教室に6ヶ月以上継続して参加した人のうち、約74%が「体力の向上を実感した」と答えています。
地域包括支援センターとは?
- 介護や健康、福祉の相談窓口
- 保健師、社会福祉士、ケアマネジャーなど専門職が常駐
- 家族の相談も可能で、包括的に支援してくれる
「何から始めたらいいか分からない」というときは、まず地域包括支援センターに相談することが、正しいスタートになります。
社会参加がフレイル改善につながる理由とは
フレイルの大きな要因の一つが「社会的フレイル」です。これは、人とのつながりが減り、孤立してしまうことによって心身の機能が衰えていく状態を指します。誰かと話す、外に出る、役割を持つ――それだけでもフレイルの進行を防ぐ効果があります。
社会参加のメリット
- 会話や交流が脳の活性化につながる
- 外出することで運動量が増える
- 「役に立っている」という実感が自己肯定感を高める
国立長寿医療研究センターの調査では、週に1回以上の社会参加をしている高齢者は、まったく参加していない人と比べて、フレイル発症率が約50%低いというデータもあります。
参加しやすい活動例
- 趣味のサークル(囲碁、手芸、合唱など)
- 地域のボランティア活動(子ども食堂、見守り活動など)
- 地域イベント(お祭り、健康フェスタなど)
「ちょっと興味がある」「少し話したい」その気持ちを大切にして、無理なく楽しめる場に一歩踏み出すことが大事です。
支援制度を知らないと損!行政サービスの賢い使い方
実は多くの自治体には、フレイルや介護予防を目的とした「お得で便利な制度」が用意されています。しかし、その情報が届かずに活用されていないケースも少なくありません。
知っておきたい主な制度
- いきいき健康手帳の配布(健康記録や目標管理ができる)
- 移動支援サービス(通院や買い物のサポート)
- 高齢者向け無料・低額運動プログラム
中には、市のホームページに掲載されているだけで広く周知されていない制度もあるため、情報を自分で取りに行くことが重要です。
情報の集め方
- 市区町村の高齢福祉課に問い合わせる
- 地域包括支援センターの窓口で相談
- 広報誌や回覧板をチェックする
また、行政サービスの多くは「利用申請が必要」なケースがあります。条件や期限がある場合もあるため、早めの確認と申請がカギになります。
フレイルは「ひとりでなんとかしよう」と抱え込まず、地域や行政と連携することが効果的です。支援の輪に加わることで、健康面だけでなく、気持ちの面でも前向きになれる人が増えています。まずは近所の介護予防教室や支援センターをのぞいてみるところから始めてみましょう。支援制度を上手に使えば、これからの人生をもっと豊かに過ごせるはずです。
まとめ
フレイルという言葉、最近よく聞くようになったけど、「まだ自分には関係ない」と思っていませんか?
実は、フレイルの初期サインはとてもさりげなく現れるため、多くの人が見逃してしまいがちです。
たとえば、「最近よくつまずく」「少しの外出でも疲れる」「ごはんが前よりも美味しく感じない」「なんだか気分が乗らない」――
こうした小さな変化が積み重なると、運動機能の低下や栄養状態の悪化、心の元気の低下へとつながり、結果として要介護状態に近づいてしまう可能性があります。
でも、ここで大切なのは「気づいたときにすぐ行動できるかどうか」。
この記事で紹介したように、フレイルは早期発見と日常生活の中での小さな工夫で予防・改善ができる状態です。
自宅でできる「フレイルチェック」から始めよう
厚労省が提案している「フレイル簡易チェック」や、歩行スピード、体重の減り具合、会話や外出の頻度などを意識することで、
ご自身やご家族の状態を確認することができます。
また、家族や周囲の人の声かけや観察もフレイルの早期発見にはとても重要です。
「ちょっとした変化に気づけるかどうか」が大きな分かれ道になります。
できることから始める!無理のない改善習慣
フレイル対策で何より大切なのは、「頑張りすぎず、生活に無理なく取り入れること」。
たとえば次のようなことから始めてみましょう。
- 朝の散歩で歩く習慣をつける
- 日々の食事に、たんぱく質を意識して取り入れる
- 一緒に暮らす家族と会話する時間を増やす
- 地域の介護予防教室や体操サークルに参加してみる
こうした取り組みを続けることで、心と体の両方が前向きになり、フレイルを遠ざけることができます。
間違った対策には注意が必要
ただし、注意したいのが「良かれと思ってやっていること」が逆効果になるケースです。
- 自分に合わない激しい運動で逆に体を痛めてしまう
- サプリメントだけに頼って食事のバランスが崩れる
- 「まだ大丈夫」と症状を軽く見てしまい、対策が遅れる
これらはすべて、フレイルを進行させる可能性があります。
だからこそ、「正しい知識」と「自分に合った方法」を見つけることが大切です。
一人で抱え込まない!地域や制度の力を借りよう
もし不安を感じたら、地域包括支援センターや医療機関、介護予防教室などの地域資源を活用しましょう。
たとえば:
- フレイル対策プログラムが用意された地域イベント
- 管理栄養士による食事相談
- 運動習慣を身につける教室
など、多くの支援が自治体で行われています。
知らないだけで、活用できる制度やサービスはたくさんあります。ぜひ情報収集してみてください。
今日からできる一歩を踏み出そう
フレイルは、年齢を重ねたすべての人にとって「無関係ではない身近な課題」です。
でも、日々のちょっとした工夫で改善できる可能性が高いのがフレイルの特徴でもあります。
「最近ちょっと調子が悪いな」と思ったときこそ、自分の体と心に耳を傾けるチャンスです。
早めの気づきと、今日からの小さな一歩で、健康寿命を延ばすことができます。
自分のために、大切な家族のために――
フレイル予防という「未来への投資」を、今日からはじめてみましょう。