あなたが亡くなったときは、「被相続人」として、配偶者や親族に遺産が相続されます。
相続は、民法で定められた「法定相続人」が相続分をもらいます。
しかし、「遺言書」があれば、法定相続人以外にも遺産を相続させることができます。
「法定相続人」とは民法が定めた相続人
民法で定められている相続人を「法定相続人」といいます。
民法の第5編「相続」第2章「相続人」の第886条から第895条には、法定相続人について定めています。
- 第886条(相続に関する胎児の権利能力)
- 第887条(子及びその代襲者等の相続権)
- 第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
- 第890条(配偶者の相続権)
- 第891条(相続人の欠格事由)
- 第892条(推定相続人の廃除)
- 第893条(遺言による推定相続人の廃除)
- 第894条(推定相続人の廃除の取消し)
- 第895条(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)
この条文で、相続権を与えられる法定相続人の範囲が決まっています。
法定相続人以外で相続できる人
故人(被相続人)が法定相続人以外の人に遺産を相続させることを「遺言書」に書き残していた場合は、法定相続人以外にも相続させることができます。
「遺言書」がないときは、法定相続人に認められた分割の割合をもとに、みんなで話し合って相続の内容を決めます。
法定相続人になる人と相続人の順番
法定相続人の中で、故人の正式な婚姻関係にある配偶者は無条件で法定相続人になります。ただし、事実婚や内縁の配偶者は、法定相続人になりません。
故人が死んだときに配偶者と別居していたり、離婚調停中であっても法律上は配偶者なので法定相続人になります。
配偶者以外は、法定相続人の順位が決まっています。
法定相続人の順位は、第1順位・第2順位・第3順位が定められいて、順位の高い人だけが法定相続人になります。
つまり、第1順位の相続人がいる場合、第2順位・第3順位の人は法定相続人になれません。
第1順位がいなくて、第2順位がいる場合は第2順位の人が法定相続人になり、第3順位の人は法定相続人になれません。
第1順位から第3順位以外の親戚は、相続人になることはできません。
●無条件:配偶者
故人(被相続人)に配偶者がいた場合、必ず法定相続人になります。
●第1順位:子供(孫)
相続順位は、子供が第1順位となっています。親や兄弟姉妹がいても、被相続人(故人)に子供がいる場合は、子供が法定相続人になります。
配偶者がいる場合は、配偶者と子供で遺産を相続することになります。
故人の子供が死亡している場合は、孫が親(故人の子供)に代わって代襲相続できます。また、この代襲相続は、ひ孫など何代にわたっても相続することができます。
配偶者がいない場合は、子供だけで全てを相続します。
●第2順位:親(祖父母)
故人に子供や孫などの直系卑属がいない場合は、親が法定相続人となります。
配偶者がいる場合は、配偶者と親が遺産を相続します。
親が死亡していて、祖父母がいる場合は、親に代わって祖父母が相続できます。
親や祖父母、曾祖父母などを直系尊属といい、上へ何代も相続権が続きます。
直系尊属の場合は、「代襲相続」とは言いません。
●第3順位:兄弟・姉妹(甥・姪)
故人に子供や孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属がいない場合は、兄弟・姉妹が法定相続人になります。
兄弟・姉妹が死亡していて、甥や姪がいる場合は、甥や姪が相続人になります。
第3順位の兄弟・姉妹が死亡した場合は、直系卑属や直系尊属と違いその子供(甥・姪)までしか相続権がありません。
つまり、甥や姪の子供には代襲相続権がありません。
法定相続人の6つの注意点
1.法定相続人が「相続放棄」をした場合
遺産を相続しないことを「相続放棄」といいます。相続放棄をした場合は、はじめから相続権が無いことになります。
相続放棄をすると「代襲相続」も無くなります。つまり、相続放棄した人の子供も相続できません。
例えば、兄弟が3人いて、そのうちの1人が「相続放棄」すると残りの兄弟2人で遺産を分割することになります。また、兄弟3人全員が相続放棄すると第2順位の故人の親に相続権が移ります。
その親が相続放棄をすれば、祖父母に相続権が移ります。
2.内縁の妻に子供がいる場合
戸籍上の婚姻関係のない「内縁の妻」は、法定相続人になることができません。
しかし、故人に認知された子供がいれば、子供は法定相続人になることができます。なお、内縁の妻の連れ子も法律上の親子関係がないので、法定相続人になれません。
3.養子縁組で親子になった場合
養子縁組は、法律上で親子関係にない人に法律上の親子関係にする手続きです。
養子縁組をすると実子と同じように法定相続人になって遺産を相続できます。
ただし、養子縁組には、「普通養子縁組」と「養子縁組」の2種類があります。
普通養子縁組は、実の親とも親子関係を継続したままなので2組の親を持つことになります。
4.法定相続人が行方不明の場合
法定相続人の中に行方不明の者がいるときは、「失踪宣告(しっそうせんこく)」の手続きを行って遺産分割を行います。
家庭裁判所で失踪宣告を行い、認められると行方不明者は、死亡したものとみなされます。
ただし、行方不明者が戻ってきて家庭裁判所で手続きを行うと死亡は取り消されます。そのとき、すでに遺産が分割され、消費されていると相続できた財産を取り戻すことはできません。
5.法定相続人が相続欠格の場合
故人(被相続人)や相続順位にあるものを殺そうとしたり、殺して刑を受けた者や殺害されたことを知っているのに告発、告訴しなかった者、遺言書を偽造・変造したり、詐欺・強迫によって遺言書の内容を変更させた者などは、相続欠格になる。
法定相続人が相続欠格になると相続権を失い、遺言があっても相続財産をもらえません。ただし、代襲相続は可能で、その人の子供は相続人になれます。
6.相続人廃除になった場合
「相続人廃除」は、故人(被相続人)を虐待したり、侮辱行為をした法定相続人の相続権をはく奪することです。
この相続人廃除は、被相続人が自分の意思で決めることができます。
7.法定相続人がいない場合
故人(被相続人)に親族がいない場合、遺言書を書いておけば親族以外の人に遺産を残すことができます。
しかし、遺言書がない場合、法定相続人がいなければ家庭裁判所が相続財産管理人を選んで、その管理人が相続人を探す公報を出します。
そして、相続人や相続債権者が公報の期間中に現れなければ、遺産は国庫に入ります。
法定相続人の遺産を相続する権利
法定相続人が相続する遺産の割合を民法が定めています。
その民法が定めている遺産取得分の割合を「法定相続分」といいます。
法定相続分:配偶者がいる場合
法定相続人が配偶者のみであれば、遺産のすべてが法定相続分になります。
第1順位の直系卑属(子供・孫など)が法定相続人になる場合は、配偶者と直系卑属が法定相続人になります。このとき配偶者の法定相続分は、遺産の2分の1になり、直系卑属の子供や孫などは、2分の1を分けます。
第2順位の直系尊属(親・祖父母など)が法定相続人になると、配偶者の法定相続分は、遺産の3分の2になり、直系尊属の親などが3分の1を受け取ります。
第3順位の兄弟・姉妹が法定相続人の場合、法定相続分は、配偶者が4分の3で、兄弟・姉妹は、残りの4分の1を兄弟・姉妹で分割します。
法定相続分:配偶者がいない場合
法定相続人に配偶者がいない場合は、相続権の第1順位の直系卑属(兄弟・孫など)に全遺産が相続され、その人数で均等に分割されます。
また、第1順位がいない場合は、第2順位の直系尊属(親・祖父母など)に相続され、第2順位がいなければ、第3順位の兄弟・姉妹に相続され、人数で分割します。